平成16年度日本コンクリート工学協会北海道支部優秀学生賞の選考結果

 

平成15年に北海道支部が創立10周年を迎えた際に、道内大学、短大、高専の学生を対象に優秀学生賞を創設しました。平成16年度の卒業生、修了生を対象として本ホームページでも募集を行いましたが、3月初めの締切りまでに修士論文4編の応募をいただきました。その後、支部内に下記の通り授与審査委員会を組織し、応募書類を元に慎重に審査しましたところ、次の通り1名に対し受賞を決定し、去る5月17日に行いました支部総会の際に表彰式において表彰状と記念品を贈呈しました。

平成17年度は2006年1月頃に募集要項を公開します。

 

 

平成16年度日本コンクリート工学協会北海道支部優秀学生賞

 

受賞者:穴吹 拓也君(北海道大学大学院修了)

論文名:SRC造内柱梁接合部におけるせん断応力分担に関する解析的研究

 

授与審査委員会

 委員長 大沼 博志 (北海道大学)

 委員  串山  繁 (北海学園大学)

 委員  千歩  修 (北海道大学)

 委員  武田  寛 (北海道工業大学)

 委員  堀口  敬 (北海道大学)

 

審査講評

1)鉄骨とコンクリート間の付着を考慮したSRC造の柱梁接合部に関する有限要素解析を行っており、実用化に向けた新しい知見が盛り込まれている論文である。平成16年度のJCI北海道支部優秀学生賞に値する論文であると考える。

2)3次元非線形FEMを用いて,複雑なSRC造柱梁接合部の解析をきめ細かにモデル化し解析している。特に,圧縮ストラットの可視化および接合部せん断力のコンクリート分担率の推移は分かり易く表現され,後者については設計時の貴重な資料となろう。論文では今後の課題についても言及しているが,繰返し挙動の解析結果は実験結果と非常に良い一致を示している印象を受ける。同様の結果が形状,材料特性が異なる他の試験体についても得られるのかも含めて今後に期待したい。

3)当研究室では、SRC造柱梁接合部のせん断力に関する多くの実験を行ってきた。本研究は、その実験データから、コンクリートと鋼の付着特性をモデル化して、3次元有限要素解析を行ったものであり、SRC接合部の解析的研究は極めて少なく、独創性に富んでいる。この解析プログラムで既往の実験と比較して、妥当性を検討しており、実験値に比べ早い段階で耐力低下が見られること、解析に長時間(4〜7日)かかるという欠点はあるが、優秀賞に十分該当する論文である。

4)この研究は、SRC造の柱梁接合部におけるせん断力の分担を解析的に研究したものである。鉄骨とコンクリートの非線形付着特性を考慮することにより繰返し荷重下の応答履歴の解析精度が向上することと、荷重増加に伴う構造部材要素のせん断力の再分担を明らかにした点に特長がある。

5)本研究は、SRC造骨組の内柱と梁の接合部の繰り返し加力時の挙動について解析を行ったものである。鋼板とコンクリート間の付着や接合部内部の状況等の複雑な影響をうまく考慮しており、この成果は実用レベルに達しているものと判断される。